専門学校で担当している1学年が、年内最後のDTP(デスクトップ・パブリッシング)課題である「飲食店のメニューデザイン制作」を終了し全員なんとか提出となったので、学科ロビーに全作品を展示した。
飲食店のメニュー制作課題は3年前から授業に取り入れている実習課題で、入学後デザインの基礎やパソコン操作、アプリケーションの使い方などを学び、年内のDTP学修成果の発表課題として取り組んでいる。
「飲食店のメニュー制作」を課題として採用している理由は下記の点においてDTPの基礎を学ぶのに最適と判断したからである。
①デザインの4つの基礎を押さえている。
デザインの4つの基礎とは「近接」「整列」「反復」「コントラスト」の4点で、対象となるデザインを見たときに「整っている」「わかりやすい」「伝わりやすい」「何を伝えたいのかがわかる」など、グラフィックデザインにおける情報伝達の基礎を指す。
②折加工によるページという概念を含んでいる。
すべての飲食店メニューが該当するわけではないが、多くの場合複数ページに渡ってそのお店のメニューを紹介しているものが多い。イチオシ・洋食・和食・おかず・飲み物・デザートなどカテゴリーごとに分割し設定したページに割り当てていく。初めてメニューを作る場合はページが分かれていたほうが区分け作業がしやすいため、展開A3状態の様々な折加工についてもあわせて教えている。
③画像加工処理を含んでいる。
料理の写真はある程度こちらで用意をするが、未加工のものがほとんど。レイアウトによっては画像の切り抜き作業を要するためパスを使った画像切り抜きの練習になる。また色や明るさも未調整の画像が多いため、美味しく見せるためにはどのような色補正や明るさ調整をすれば良いかなども考えながら画像処理を行う。数をこなすことで切り抜きや加工のスピードも徐々に早くなってくる。
④表現課題としての要素も含んでいる。
飲食店のメニューとひとことで言っても、業態はもちろんターゲットやコンセプトなど考えなければいけないデザイン要素は多数存在する。どんなお客さんに来てほしいのか?年齢層は?男女比は?どんなシーンで使ってほしい?お店のこだわりは?コンセプトは?などなど。これが明確になっている作品はどれも良い表現になっている。
まだ拙い作品がほとんどだが、4年間続けてきて思ったことは各自の過ごしてきた時間が大きく反映されているということである。
特に上手に仕上がっていると思った作品の作者たちにはいくつかの共通点があった。
・洋食レストランなど飲食店でアルバイトをしている。
・様々なお店で飲食を楽しんでいる。
・イタリアン専門、和食専門、カフェなどのお店をイメージすることが出来ている。
・お客さんに料理を美味しそうに見せるには、伝えたい情報をどのように伝えれば良いかを考えている。
前半の2つはデザイン制作をする上で最も重要な「本物を見る・触れる・体験する・感動する」という自己体験に基づいた内容となる。それを踏まえて思い返すとやはりアクティブな学生の方が表現力に長けている。逆にあまり積極的に外出をしない学生はどうしても固定観念から抜け出すことが出来ず「それっぽい」ものに落ち着いてしまう節がある。
20代のうちはまだまだ多くの感動できることがあり面白いほど吸収できる時期なので、学生たちにはぜひ積極的に「本物を見る・触れる・体験する・感動する」機会を増やしてほしい。